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JOURNAL - Éléphants > #3 愛称が、愛着に変わっていく話 – 前編

#3 愛称が、愛着に変わっていく話 – 前編

 

どうして、JOURNALの名前が「Éléphants / エレファン」なのか?
不思議に思われた方もいるかと思います。

シンプルに「JOURNAL」のみでも良かったけれど
あえてテーマを絞らずに、どこか実験的に育てていく事になるであろう
この新しいコンテンツに愛着の持てるネーミング、愛称をつけたかったのです。

 

 

公開前、「どんな名前にしよう?」と
長年愛用しているネーミング辞典のページをめくりながら
「動物の名前、どうかな?」と候補を読み上げ始めたデザイナーの唐澤。

元々動物にまつわる様々な書籍を読んだり
ドキュメンタリーを見ることが大好きで
「なんだか壮大すぎる話かもしれないのだけれど」と前置きし
昨今の世界情勢も相まって、人間だけはでない
地球上で共に生きる動物たちを愛おしく思う気持ちが強くなったと言います。

 

 

仏語で象を意味する「Éléphant」が読み上げられた時
私自身も象がとても好きで、言葉の響きもスッと心に落ちるような感覚があり
唐澤も「やっぱり、そう思う?」と頷き
動物の名前はまったくの予想外だったけれど
自然な流れで意見が合致し、こうしてJOURNALの愛称が決まりました。

また、回を重ねるごとにアーカイブされていく記事が
ページの空白を埋め、だんだんと群れのように集っていく様を想像し
複数形の「s」をつけ「Éléphants」となりました。

 

 

ここで唐澤の愛読書の中から、とても印象に残っているという
象にまつわる一冊の書籍のエピソードを合わせてご紹介したいと思います。

 

この本を読もうと思ったのは知人から勧められハマってしまった福岡伸一(生物学者)さんが翻訳をしていたことがきっかけです。福岡ハカセの本を読むようになってから物事をバランスで見るようになりました。そしてついつい狭めてしまいがちな視野を広げていく大切さ。人間社会の困難ばかりが問題ではありません。自然から学ぶことはまだまだあるのです。

「エレファントム」にはかつて象牙乱獲のターゲットとなった
アフリカ象が絶滅の危機にさらされた背景が描かれています。そうした危機に面しているのはもちろんアフリカ象に限ったことではありませんが。

動物行動学者である著者ワトソンが行方不明となった最後の一頭とされる大きな雌象を追ってケープタウンに向かい森林地帯から突然、崖となる大地と海原で見た光景。美しく感動的なシーンです。

 

 

“ 空気に鼓動が戻ってきた。私はそれを感じ、徐々にその意味を理解した。シロナガスクジラが再び海面に浮かび上がり、じっと岸のほうを向いていた。潮を吹き出す穴までが、はっきりと見えた。
 太母は、この鯨に会いに来ていたのだ。海で最も大きな生き物と、陸で最も大きな生き物が、ほんの100ヤードの距離で向かい合っている。そして、間違いなく意思を通じあわせている。超低周波音の声で語り合っている。
 大きな脳と長い寿命を持ち、わずかな子孫に大きな資源を注ぎ込む苦労を理解する者たち。高度な社会の重要性と、その喜びを知る者たち。この美しい希少な女性たちは、ケープの海岸の垣根越しに、互いの苦労を分かち合っていた。女同士で、太母同士で、種の終わりを目前に控えた生き残り同士で。
 私は涙をこらえ、彼女たちに背を向けた。そこはちっぽけな人間のいるべきところではなかった。”

 
引用元:
ライアル・ワトソン 著・福岡伸一 / 高橋紀子 訳
「エレファントム 象はなぜ遠い記憶を語るのか」
第6章 クニスナの太母 P.285-286 より
出版元 木楽舎

 

 

Key Item
「エレファントム 象はなぜ遠い記憶を語るのか」
ライアル・ワトソン 著・福岡伸一 / 高橋紀子 訳

 

<この記事の後編は #4 でお読み頂けます。>

 

動画・写真・文 / Nao Watanabe
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